認識は「現実」ではない:人々の認識がずれていることは?

イプソスが世界40カ国で実施した「Perils of Perception―認識の危険性調査」で、40カ国の人々は世界で起こっている現実や自国の国民の特徴について誤解して捉えていることが明らかになりました。

<全体の傾向>

  • 調査実施国の多くは、自国に居住するイスラム教徒の数について誤解している。人々の認識は実際の数よりも多く、驚くべきスピードで増加していると捉えている
  • 自国の幸福感に関する認識では、調査対象の全40カ国で、実際に「幸福だ」と回答した人々の割合のほうが高い
  • 同性愛、妊娠中絶、婚前の性交渉については、実際には、人々は考えられているよりも寛容である
  • 富の分配については、今回調査対象となったほとんどの国で人々の認識よりも現実のほうがより偏っている

日本人の認識と現実を見てみると・・・

  1. イスラム教徒の数:今回の調査結果から、日本では平均すると100人中6人がイスラム教徒であると認識されていることがわかったが、これは大きな誤解である。実際には1000人中2人である。
  2. イスラム教徒数の今後: 2020年のイスラム教徒数がどうなっているかとの質問への回答は、平均で100人中7人であった。Pew Research Centreの予測では、日本では増減なし(1000人中2人)となっている。ここでも大きな誤解があることがわかった。
  3. 幸福感:日本人は幸福だと感じていると思う、と回答したのは42%であった。World Values Surveyによると「自分は幸福だと思う/まあ幸福だと思う」と回答したのは86%で、44ポイントの乖離が見られた。
  4. 同性愛:「同性愛を許せない」のは31%(Pew Research Centre調べ)であったのに対し、「許せないと思っているのはどの程度だと思うか」という質問への回答の平均は42%であった。日本人は同性愛について、思っているよりも寛容なようだ。
  5. 婚前の性交渉: この項目では、現実に近い見方をしている。「婚前の性交渉は許せない」は21%(Pew Research Centre調べ)、「許せないと思っているのはどの程度だと思うか」には26%との回答であった。
  6. 妊娠中絶: この項目では、「妊娠中絶は許せない」が28%(Pew Research Centre調べ)、「妊娠中絶を許せないと思っているのはどの程度だと思うか」が41%で、認識が現実を13ポイント上回り、実際には寛容なことがわかった。
  7. 下位70%が占める富の割合: 下位70%が占める富の割合について推測してもらったところ、32%という結果で、これは実際の数字(24%)を上回った。
  8. 持ち家:住宅の持ち家率については、日本の対象者の認識は半数程度(51%)であったが、現実は62%である。
  9. 健康関連支出:世界銀行のデータでは、日本のGDPに対する健康に関する支出が占める割合は10%である。しかし人々はより多いと感じているようで、今回の調査結果は22%であった。
  10. 現在の人口:他の対象国同様、日本人は人口についてはかなり正確な数字を把握している。実際は1億2696万人であるのに対し、認識は1億2000万人であった。
  11. 今後の人口増減:しかし、将来の人口増減の見通しについては少し甘めである。国連の予測によれば2050年の日本の人口は1億741万人であるのに対し、今回の調査結果では一億人を切る(9800万人)という認識であった。
  12. アメリカ大統領選: この調査はアメリカ大統領選挙の1ヶ月前に実施されたので、それについての予想を質問した。結果は、ほとんどの国でクリントン氏優勢であった。日本では70%がクリントン氏の勝利を予想しており、トランプ氏勝利を予想したのはわずか8%であった。

実は、世界には日本よりもさらに現実や将来の見通しを正しく認識していない国が多い

  1. 下位70%が占める富の割合:世界の人々は下位70%が占める富の割合を多く認識している。今回の調査対象40カ国の平均では、下位70%が占める富の割合は15%であるのに対し、人々の認識はほぼ2倍の29%であった。特にインド39%(実際は10%)、タイ33%(実際は9%)、南アフリカ29%(実際は8%)、台湾39%(実際は17%)、アメリカ28%(実際は7%)などで、現実と認識の乖離が大きかった。
  2. 持ち家:住宅の持ち家率については多くの国で低く認識されていた。調査対象国全体の平均では、実際には68%が住宅を購入し所有しているのに対し、調査結果での認識は49%にとどまった。インドでは、実際は87%が持ち家に住んでいるのに対し、今回の調査でそれと認識しているのは44%にとどまった。大都市の中間層には住宅購入の風潮が高まっていてその希望者も多いが、現実的にはそれ以外の人々は持ち家率が高い。
  3. 健康関連支出:世界銀行のデータでは、今回の調査対象40カ国の合計では、GDPに対する健康に関する支出が占める割合は8%である。しかし、人々の認識はより多く、今回の調査結果では21%であった。現実と認識の乖離が最も大きかったのはマレーシアで、39%以上という認識に対し、実際は4%である。
  4. 現在の人口と今後の人口増減:対象国全体で現実と認識のずれがあまり見られなかったのは人口である。ほとんどの国でその差は5%以内であった。特にドイツでは正確に数字と捉えていた。差が開いていたのは香港とシンガポールで、香港は10%多く、シンガポールは10%少なく認識していた。 しかし、2050年の人口予想については話が違う。たとえば台湾では、人口は大きく膨らんでいるだろうと認識しているが、国連では減少すると予測している。また、アメリカでは人々が認識しているよりも、国連の予測値のほうが大きい。このように、人口の増減を正確に見通している人々は概して少なかった。
  5. アメリカ大統領選: ドナルド・トランプ氏の勝利を予測した国は、40カ国中、ロシア、セルビア、中国の3カ国のみであった。

認識と現実のずれが大きい国は?

今回の調査結果を見ると人々が抱いている認識と現実のずれは、国によっての傾向がある。イプソスが独自に算出した指数では、現実を正確に認識している国はオランダ、次いでい英国、韓国と続く。日本は40か国中、14番目であった。

一方、最も認識と現実の乖離が大きい国がインドで、次いで中国、台湾あった。

調査概要

調査時期
2016年9月22日~11月6日
調査対象者
18~64歳、または16~64歳の男女(国別の制限による)
調査対象国
40カ国(アルゼンチン、オーストラリア、ベルギー、ブラジル、カナダ、チリ、中国、コロンビア、チェコ、デンマーク、フランス、英国、ドイツ、香港、ハンガリー、インド、インドネシア、イスラエル、イタリア、日本、マレーシア、メキシコ、モンテネグロ、オランダ、ノルウェー、ペルー、フィリピン、ポーランド、ロシア、セルビア、シンガポール、南アフリカ、韓国、スペイン、スウェーデン、台湾、タイ、トルコ、米国、ベトナム)
サンプルサイズ
27,250人(各国500人/オーストラリア、ブラジル、カナダ、中国、フランス、ドイツ、英国、イタリア、日本、スペイン、米国では各国1000人/チェコ、モンテネグロ、オランダ、ノルウェー、セルビアでは各国800人)
調査方法
イプソスオンラインパネルを利用したオンライン調査(チェコ、モンテネグロ、オランダ、ノルウェー、セルビアではオンライン調査または対面調査)

「実際のデータ」について:The World Values SurveyPew Research Center 等信頼性のあるデータソースを利用。詳細についてはこちらをご覧ください。