「移民の現状に不快感を抱いている」が多数

公共サービスの負担について特に懸念

10人中6人が難民を装ったテロリストがいることを懸念、10人中4人は国境の完全封鎖を望む

イプソスは2016年7月、世界22か国で16,040人を対象に移民危機に関する調査を実施しました。多くの調査対象国で移民に対しての姿勢が否定的であることがわかりました。少数派とはいえ、難民に対して国境を完全に封鎖したいと答えた人が無視できないくらいの割合で存在しており、その中の多くが難民を装ったテロリストがいることを懸念していました。

調査概要

調査時期
2016年6月24日~7月8日
調査対象者
18~64歳男女(アメリカ/カナダのみ16歳~64歳男女)
調査対象国
22カ国(アルゼンチン、オーストラリア、ベルギー、ブラジル、カナダ、フランス、ドイツ、イギリス、ハンガリー、インド、イタリア、日本、メキシコ、ポーランド、ロシア、サウジアラビア、南アフリカ、韓国、スペイン、スウェーデン、トルコ、アメリカ)
サンプルサイズ
16,040人(各国500人/オーストラリア、ブラジル、カナダ、フランス、ドイツ、イギリス、イタリア、日本、スペイン、アメリカでは各国1000人)
調査方法
イプソスオンラインパネルを利用したオンライン調査

全体的に見て移民に対する姿勢は否定的傾向

  • 22カ国全体の平均では、78%が「過去5年間で自国への移民の人数が増加した」と回答した。トルコ、スウェーデン、ドイツ、および南アフリカでは、「移民の人数が増加した」と答える傾向がより強く、10人中9人、もしくはそれ以上の人が「増加した」と回答した。2011年の調査結果と比較すると、「移民が増加した」と考える人の割合が最も増えたのは、トルコ、スウェーデン、ドイツ、およびフランスである。
  • 「移民によって自国にマイナス影響があった」と回答したのは22カ国の平均45%で、「プラス影響」と回答した20%を上回った。トルコ、イタリア、ロシア、ハンガリー、フランス、およびベルギーでは10人中6人が、「移民によってマイナス影響があった」と答えた。その一方で、「移民によって自国にプラス影響があった」と答えた人がサウジアラビアでは48%、インドでは45%であった。
  • 「自国にいる移民の数は多すぎる」と答えたのは22カ国の対象者のうち半数にのぼり、「移民が原因で、自国が好ましくない方向に変化している」と答えた人の割合(46%)も近い数値であった。特に、トルコ、イタリア、ロシアではどちらの質問に対しても懸念度が高かった。日本は「自国にいる移民の数は多すぎる」と回答した人の割合が最も低かった(12%)。「移民が原因で、自国が好ましくない方向に変化している」と答えた人の割合が最も低かったのはブラジルだった。
  • イギリスでは、前年までと比べ、肯定的な見方が増えている。イギリス人の35%は「移民によって自国にプラス影響があった」と回答した(前年28%、2011年19%)。一方、「イギリスにいる移民の数は多すぎる」と回答したのは49%(前年60%、2011年71%)であった。「移民の受け入れを減らす」という主張がイギリスのEU離脱の決定要素となったと考えられることや、移民が大幅に増えている現状にもかかわらず、このようなプラスの変化が見られた。

自国の公共サービスの負担について特に懸念

  • 「自国の公共サービスに多大な負担がかかる」という意見に賛同したのは全体の半数(50%)であったのに対し、反対は18%であった。公共サービスへの負担についての懸念度が最も高かったのはトルコ(2011年45%→今回72%に増加)で、以下、南アフリカ(62%)、アメリカ(60%)、フランス(60%)と続いた。
  • 経済的観点では、「移民によって、自国民の就業が以前より難しくなった」と言う意見に賛同したのは全体平均で44%、反対したのは15%であった。「移民は自国の経済によい影響をもたらす」という意見に賛同したのは28%にとどまった(反対は28%)。
  • 自国の人材不足の分野に就業できる技能や職能を有する移民に優先権を与えるべきか、という問題については意見が分かれた。これに賛同している人は全調査対象国平均で40%であったが、イギリス、南アフリカ、サウジアラビア、オーストラリアでは半数を超えた。
  • 「自国は移民によって、暮らす場所として以前より興味深いところになった」という意見に賛同したのは平均して10人中3人(29%)であった。オーストラリア、イギリス、サウジアラビア、カナダ、アメリカにおいては、この意見に賛同する割合が高かった。一方で、ロシア、ハンガリー、日本、イタリアでは非常に低かった。

10人中4人が、「難民に対しては国境を封鎖したい」と答えており、10人中6人が、「難民を装ったテロリストがいる」と懸念している

  • 調査対象22カ国の平均では、10人に4人(38%)が、「自国は難民に対して国境を完全に封鎖すべき」という意見に賛同した。ほとんどの国で国境は開かれた状態に置くべきという意見が半数以上であったが、トルコ、インド、ハンガリーでは国境封鎖に賛同する意見が多かった。また、2015年と比較して賛同する割合が顕著に増えた国は、トルコ、アメリカ、スウェーデンであった。
  • 22カ国平均で10人中6人(61%)が、「テロリストが難民を装っている」という意見に賛同した。トルコ、ロシア、インド、ハンガリー、ドイツ、アメリカでは10人中7人以上だった。2011年の調査結果から増加幅が最も大きかったのは、ロシアとドイツであった。
  • 多くの国で半数以上の人々が「自国に難民としてやって来る外国人のほとんどは、実は難民ではなく経済的利益を得ることを目的とした移住者である」と考えている(全体平均51%、ロシアでは81%)。
  • 「自国に来る難民は、国内でうまく溶け込んでやっていけると思う」という意見に賛同した割合は41%にとどまった。(特に懐疑的なのはトルコ、フランス、ベルギーで、10人中6人以上がうまく溶け込めるという意見に反対)。

この調査結果について、Ipsos MORI Social Research InstituteのマネージングディレクターであるBobby Duffyは以下のように意見を述べている:

「移民はグローバルな問題です。移民の現状や規制、大量の人が移動することによって生じる影響についてのん気に構えている国はほとんどありません。移民によって受ける影響については、多種多様な考え方があるものの、調査対象の22か国で「移民によって自国にプラス影響があった」と考える人が過半数を占めたところは1つもないのです。今回の調査結果からトルコ、イタリア、ハンガリー、ロシアなどでは特に苦悩している様子が明確に読み取れます。

しかし「移民によって国が豊かになる」と認識している人も少なからず存在しており、移民に対する考え方は完全に否定的なわけではありません。また、難民危機は多くのヨーロッパ諸国と周辺諸国に影響を与えてはいますが、ここ数年で問題に対する態度が否定的な方向に大きく変わったわけではありません。個々の国で懸念度は高まったものの、22か国全体で見ると、これまでの5年間、問題に対する姿勢はかなり安定した状態を維持しています。

実際イギリスは、移民問題の多くの側面で今までより肯定的になりました。これは、移民の受け入れを減らしたいうという願いがイギリスのEU離脱決定の重要要素であったことを踏まえると、驚くべきことです。とは言え、この調査結果からわかるように、一つ一つの尺度で見ると「移民に対して肯定的である」人よりも「否定的」である人の方が依然として多いことを留意しなくてはならなりません。また、考え方が肯定的な方向に転じるという傾向は、他の調査結果でも見られます。イギリスの国民投票では意見が二極化しており、少数派ではあるものの、移民に注目しすぎであるという声もますます聞かれるようになりました。

イギリスのEU離脱条件についてEUとの交渉が進むと期待される中、今回の調査から垣間見えるように、イギリス人は移民の人数を規制するためのポイントシステムの導入を前向きに捉えているようです。調査対象22か国の中で、「その人を移民として受け入れるかどうかを決める重要基準として、持っている技術の高さを考慮すべき」と考える傾向が最も高いのは、我々イギリスだったのです。」

この調査のレポート(英語のみ)は、こちらからダウンロードしていただけます。